LOGIN血だらけの悪魔に対してカイルは1つも攻撃を喰らっていないため、無傷だった。
そして、悪魔はあることを思い出した。 「お…思い出したぞ!お前は、イフリークの守護神だな?」 「……」 カイルは返事を返すことなく、コクっと頷いた。 「まさか、神級魔導師が相手とは。だが、このPDO(プロジェクト・デビル・オペレーター)の俺が負けるなどありえない!」 そしてPDOは地面に手を置くと周りに地割れが起こった。 カイルとミーナはあまりの揺れに体制を崩しそうになった。 「お前の魔法は影だ!その影を無くしてやればお前は何もでき…」 すると悪魔の背後から別の影が発生した。 そしてその影から一本の細長い棘がPDOの体を貫いた。 「グハァッ!こっ、これは初級魔法だと?」 地割れがやむとカイルは再び領域を作った。 今度の領域は直径30m程あり、離れていたPDOもその圏内に入ってしまった。 カイルは2つの長剣をクロスに振るとPDOの体はクロス状に切り傷が入った。 「俺はあいにく、影の魔法は全て扱えるんでね。お前のその子供が使いそうな地属性魔法は何の妨げにもならねーんだよ。」 「くっ…そぉ…ふざけやがって!」 悪魔は紫色の塊を目の前に発生させた。 しかも、今度は今まで出してきた中でも最大級の大きさで直径50mほどあった。 「仕方がねえ、先にこの町を破壊してやる。そしたら俺も死ぬがお前らは確実に死ぬぜ!」 そしてPDOはその巨大な紫色の塊を手で押すと遥か上空に打ち上げた。 上空で直径100kmくらいまで広がるとそのまま地上に落ちてきた。 「まずいぞ!あれをこの国が受けたら本当に全員死んでしまうぞ!」 騎士達や町の人々は上空にある塊を見て混乱していた。 しかし、カイルだけは落ち着いていた。 そして呪文を唱え始めた。 「表裏に通づる闇の門よ、神に赴け!」 するとカイルの影の領域が更に黒さと範囲を増し、そこから巨大な影の手が発生した。 その影の手は紫色の塊を掴むと一緒に影の世界へ引きずり込んだ。 影によって魔力の塊は消えてしまい、騎士達は驚いていた。 「すごい…あのでっかい魔力の塊を消してしまった!」 「あぁ、あの人のあの魔法はいったいどうなってるんだ?知ってるか?」 1人の騎士が質問すると隣にいた騎士が説明した。 「俺が聞いた話だと、俺たちが使う魔法は普通魔力を消費して魔法を発動するというのは基本だ。だが、団長の魔力は消費する事はなく、今みたいに膨大な魔力を使っても息一つ切らさない。」 「えっ!?消費せずに魔法使えるのか!?」 「それが影の神級魔法の特徴らしい。あの影があるが故に団長は歴代最強の騎士団団長と謳われているんだ。そこらの悪魔や悪魔祓いじゃまず団長を倒す事は無理だろう。」 その騎士が言う通り、カイルの身体は無傷で疲れている様子はなかった。 一方PDOはさっきの魔力を放ったせいもあり、既に瀕死状態だった。 「どうした。もう終わりか?」 「ぐっ…ここまで力の差があったのか…」 PDOは膝を着き、悔しさで地面を叩いてた。 「そろそろケリをつけてやる。ミーナさん、俺の部下達の方に行きなさい。」 「え、出ても大丈夫なの?」 「少しだけなら大丈夫だ。すぐに済ませるから。」 カイルがそう言うとミーナは騎士達の所へ移動した。 再びPDOの方へ目線を変えると影がカイルの剣を黒く変色させた。 「さあ、次でお前を一発で仕留めてやるよ。覚悟しろ。」 そう言ってカイルはPDOの近くまで歩み寄った。 「これでおわー」 その瞬間、カイルの視界が一瞬で暗くなった。 「なっ!なんだ…目の前が見えないぞ!」 カイルはいつの間にか真っ暗な空間に立っていて目の前にはPDOがいなかった。 「ここはいったい…どこだ!あの悪魔はどこ行った!」 いくら叫んでも自分の声が返ってくるだけだった。 この謎の空間を作ったのはPDOだった。 この空間は外から見ると黒い球体の形をしていて、カイルはそこに閉じ込められていたのだ。 カイルを閉じ込めたPDOはニヤリと笑い、ミーナと騎士達がいる方向を向いた。 「ふふふ…俺が人間ごときにやられるわけねーだろ?これでお前らは確実に死ぬ。」 PDOはさっきよりも魔力を上げるとあたり一面に衝撃が発生し、ヒビの入った周りの建物が更に崩れていった。 「なんて魔力だ!…それよりも団長だ!団長をどうやって閉じ込めたんだ!」 さっきまで優勢だったカイルがあっけなく閉じ込められたのには理由があった。 その理由はとても単純だった。 「簡単な事だ。真っ暗闇で影が出せると思うか?常識的に考えたら一発でわかるだろ?馬鹿め。こいつは影に頼りすぎたようだな。」 するとPDOはカイルが入った黒い球体を空中に浮かばせた。 そして黒い球体の周りから黒雲が発生し、黒い球体を輪っか状に囲んだ。 「消えろ!イカズチと共に!」 そして黒雲から青白い雷が発生し、黒い球体を襲った。 球体の中にいるカイルはその雷によって悲鳴をあげていた。 「ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」 「あははは!!この球体に魔法を与える事で中にいるこいつはその魔法を食らう事になるんだよ!」 「だ、団長!!!!…おのれ!許さないぞ!!」 騎士達はPDOの雷魔法を止めようとPDOに斬りかかるがPDOは軽く息を吹きかけただけで竜巻が起こり、騎士達は飛ばされていく。 「おいおい、いーのかよ?こいつあと5分もすれば死んでしまうぞ?…っいて!」 後ろから石をぶつけられたPDO。 その投げた人物はミーナだった。 「おい、お嬢ちゃん。死にたいのか?」 顔は笑っているが目は本気で殺す気でいるPDO。 しかし、そんな目に対してミーナは言った。 「あなた達って、どうして人間をこうまでして苦しめるの?」 「は?」 「あなた達悪魔は、どうして罪のない人たちをここまでして苦しめるのかって聞いてるのよ!」 そしてそれと同時に持っていた石をPDOに投げた。 しかし、その投げた瞬間にミーナの目の前に移動し腕を振り上げたところで止めた。 「そんなもん…人間を殺して食う!人間は俺たちからすれば食料に過ぎないからだ!だからてめえも俺ら悪魔に食い殺されろ!!」 そして腕を振り下ろそうとした。 しかし、その瞬間。ミーナの体の周りから強烈な光が発生した。 その光で一瞬目がくらんだPDO。振り下ろそうとした手で目を押さえた。 「なんだ…今の光は?」 PDOは光が消えてもミーナに変化は見られず、不思議に思った。 何が起こったかも気づいていないミーナは構わずに口を開いた。 「あなた達悪魔のせいで…親友だった人、親だった人、学校の仲間、みんなそれぞれの関係があってそれぞれ楽しい生活があるのよ!そんな大切な存在を壊すあなた達を、私は許さない!」 ミーナが言い終えると悪魔は顔に血管を浮かばせながらミーナに歩み寄り。 「はぁ?大切な存在だと?俺たち悪魔はなぁ、その大切な存在をぶっ壊すだけで最高に欲求が満たされるんだよ!何が楽しい生活だ!人間は俺たちの腹を満たせればそれで良いんだよ!」 そして再び腕を振り上げると、ミーナの顔にめがけて一気に振り下ろそうとした。 ゴキッ… その場に一瞬鈍い音が鳴った。 それはミーナから聞こえた音ではなく、PDOから聞こえた音だった。 「グァァァァアアア!!!!腕ガァァァァ!!」 PDOはどういう訳か、腕が逆方向に捻れた状態になっていた。 「グァ…ァァ…貴様!一体何をした!」 「何もしてないわ!自分で腕をそこまで持ってったんでしょ?」 「違う!確かに当たった…当たったはずだ!」 PDOが言うように腕は確かにミーナに当たっていたのだ。 しかし、2人とも気づいていなかったがこの時にすでにある出来事が起こっていた。 それは無意識に発動したミーナのバリヤーの様なものがPDOの腕に当たった途端反射し、その反射の威力が強すぎた為腕が後ろ向きに360°捻れてしまったのだった。 「まさか、この女が魔法を使えるとは…だが、これは何の魔法だ…衝撃系の魔法では俺の腕をここまでは…」 「それは、こいつの中に眠ってる魔力が特別だからだ。」 すると突然何処からか声が聞こえてきた。 「だ、誰だ!今の声はー」 その瞬間、捻れた腕が地面に落ちた。 あまりの速さに痛みがなかったPDO。しかし、次の瞬間強烈な痛みが襲った。 「ぐっ…グァァァァアアア!!!!」 「え、何!?何が起こってるのよ!」 ミーナも何が起こったのか分からず、混乱していたが次の瞬間ハッと気づいた。 「もしかして…この感じは…。」 PDOの背後に空間の裂け目が発生し、その中から黒いローブを身に纏った赤髪の男が現れた。 「グレン!!」 「何っ!まさか紅の悪魔祓いか!」 PDOは思い出した。こいつが今回の目的である事を。 「随分と派手に暴れてたみたいだな。悪魔…いや、悪魔の実験体。PDO(プロジェクト・デビル・オペレーター)」 「プロジェクト・おぺれーた?」 「なぜ俺の事を…」 その瞬間、PDOの体が一瞬で切り刻まれそしてカイルが閉じ込められている黒い球体まで破壊された。 「ばっ、馬鹿な!たった一瞬で…」 「お前、隙だらけだな。こんなのが本当に悪魔が改造したやつなのか?おい、ミーナ。あの黒い球体に入ってた男を助け出せ。こいつは俺がやる!」 そう言ってグレンは黒い炎を体に纏った。 「黒い…炎だと?」 「そうだ。これはお前らを狩る為の炎だ。」 そう言ってグレンは拳に炎を纏い、PDOの顔面に拳を入れた。 拳が顔に衝突すると小さな魔法陣が魔法陣が発動し、炎の威力が上がるとPDOは勢い良く燃えながら吹っ飛んだ。 「アアアア!!!あぢい!あぢいよぉ!!」 暑さと痛さでのたうちまわるPDO。そんな事は御構い無しにグレンは魔法を唱えた。 「地獄に燃える黒炎、燃やし尽くせ!」 そう唱えるとPDOの体に燃えている黒炎が更に炎圧を増し、勢い良く燃えた。 「グァァァァアアア!!!…これが、悪魔殺しの炎か…なるほど、この炎のせいで他の悪魔どもはやられるのか。」 するとPDOは魔法で体に燃えてる黒炎を体内に取り込んだ。 「なんだ…俺の炎を取り込みやがった!」 「はぁ、はぁ、…俺を誰だと思ってる。改造悪魔のPDO、ベガ様だ!今の炎を取り込んだことで俺の体は炎に耐性ができた。お前の炎はもはや何の役にも…」 シュシュンッーーーッ 光の速さでベガを切り刻み、切り刻んだあとグレンは回し蹴りでベガを吹っ飛ばした。 「がはぁっ!馬鹿な!今のは炎じゃ…」 「今のは光属性の最上級魔法だ。そしてこれが雷の最上級だ!」 するとグレンの指先から一筋の雷がベガの体を貫通させた。 「そんな…馬鹿な…人間が複数の属性を…」 そしてそのまま、ベガの息が絶えた。 「意外とあっけなかったな…PDO。注意する必要は無かったみたいだな、リフェル。」 グレンはリフェルと呼ぶと、体の中にいる悪魔がそれに返事した。 (いや、どうだかね。まだ油断は出来ねえぞ。) その声に気付いたミーナがリフェルに声をかけた。 「え?今の声はもしかしてこの前の…」 (よぉ、久しぶりだな。) グレンはリフェルとミーナが会話をしている事に驚いたのか自分の胸に向かって言った。 「おい、お前まさかあいつと対話したのか?」 (ああ?別にいーだろが。どっちにしろこいつとは一緒に旅する仲間じゃねーか?) 「どの口が言ってやがる。人間を玩具とか言ってる奴がそんな事思うわけないだろ。」 (あっ、バレたか。あはははは!!) まるで独り言の様に見えるが明らかにグレンとは違う存在と喋っているとミーナは分かっている。 しかし、この光景を初めて見る者は不思議でしかなかった。 さっきまで気絶していたカイルは場の状況を理解しようとしていた。 「これは…あの悪魔がやられている?…ん?…あの子の目の前にいるのはもしかして噂の…だが、何を独りで言ってるんだ?」 グレンの中にいる悪魔に気づいていないカイルは不思議そうに見るしかなかった。 カイルが目を覚ました事に気付いたミーナはカイルに声をかけた。 「あ、カイル君目を覚ましたみたいだね。」 「あいつが、騎士団の団長。イフリークの守護神か。」 グレンはカイルを見た瞬間、そいつが団長だという事を直感だけで判断した。 「そういう君は12騎士長が言ってた紅の悪魔祓いか。見る限りかなり出来そうだね。」 そう言ってカイルは両手に持っている剣を握りしめた。 「前からちょっと君の力を試したかったんだぁ…いいよね?」 「えぇ!?急に戦うの!それは流石にちょっとやめたほうが…」 カイルは戦う気満々の目でグレンを見つめ、それを止めようとするミーナ。 しかし、グレンはそれに対して。 「それは、俺に対して喧嘩をふっかけてると受け取っていいのか?」 「どう捉えても構わないです。ただ、悪魔祓いと呼ばれる君の実力を知りたいだけですよ。」 「…いいだろう。お前のその自信は魔力で大体分かる。受けて立とー」 承諾した瞬間、2人の剣が衝突し金属音が辺りに響き渡った。 その金属音と同時に2人の魔力がぶつかる事で爆風が発生した。ウィリディスが使用する魔法属性は空間。空間属性の神級魔法、[デリート・コネクト]。指定した部分に「シフト」と唱えると四角い透明の立方体が現れ囲う事が出来る上に、必要に応じてその立方体を広げる事が出来る。立方体の範囲を自在に広げて囲み、「デリート」と唱えればその指定された範囲を跡形も無く消す事が出来る。例えるならパソコン画面上の矢印カーソルを目的の場所に合わせて範囲指定し、一気にdeleteキーを押すイメージだ。この「シフト」による範囲指定と「デリート」による削除能力を、ウィリディスは現実世界の空間に存在する物質、生物、そしてあらゆる環境を対象に使用する事が出来る。ウィリディスが最初に竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)の木々を一瞬で消し去ったのもこの力のお陰であった。そして。「シフト」「コネクト」ウィリディスは両手を上空に挙げると巨大な立方体を展開し、「コネクト」と唱えた。その範囲は竜の遺跡を全て覆える程。しかもその上空に展開された立方体の中には最初に消し去った森の木がギッシリと敷き詰められている。そう。この木は「デリート」によって消された森の木の残骸であった。「コネクト」とは接続という意味。ウィリディスは「デリート」で消した範囲の木を「コネクト」する事で上空の立方体内に配置したのだ。そう。[デリート・コネクト]は空間を透過的に選んで削除し接続できる魔法。「シフト」で範囲指定した空間を支配する事が可能。そして上空の立方体の底がパカッと扉の様に開かれる。開き始めた隙間から木がどんどん竜の遺跡がある地上に向かって落ちていく。1本1本が大きく質量のある木。落ちる度に地面の砂埃が舞った。まるで雨の様…いや、そんな生優しいものでは無い。逃げ場を与えない広範囲を覆い尽くした木々による酷(むご)い圧殺方法。そして一度に落ちてきた大量の森の木によって竜の遺跡は飲み込まれてしまった。一方、ウィリディスは空間移動で上空に転移しており、木に押し潰され跡形も無く消え去った竜の遺跡の惨状を見下ろして見ていた。「…やっぱり、こんな程度でグレンは死ぬ訳ないか。」見下ろしながらそう言うウィリディス。どうやらグレンが攻撃を回避してる事に気付いている様だ。「出てきなよ。…決着を付けよう。」「紅の悪魔祓い、グレン。」ウィリディスの言葉と共にグレ
「うわぁぁぁぁぁ!!!ガルムが!…ガルムがあぁ!!!」ティアは胴体が分かれ絶命したガルムの上半身を抱きしめながら叫んだ。靴に血が滲むほど急いで走りドグマ達を呼びに行ったティアは決して遅くなかった。しかし、間に合わなかった。「誰が…こんな事を。俺達竜の民をこんな…こんな…。」ドグマは目の前の惨状を受け入れられずにいた。つい竜の試練洞に行く半日前までは普通の平和な生活を送っていた。昨日は龍神の祭日で民の皆んなが共に飲み食いしながら楽しんだ。ティアとガルムはもうすぐしたら祝言を挙げる予定だった。ーー皆んな今日を生き、明日を楽しみに過ごしていた筈なのに。修行が長引かずここに俺達が居ればこんな事には…。「チクショウ……チクショウ!」ドグマの目からはこの場に居なかった自分に対する悔しさの涙を流していた。「……」グレンは2人と違い、この現状をただ茫然と見ていた。それは彼が他人を想う気持ちが無いからでは無い。ここでの生活を思い出していたからだ。不便な生活であったが、他所者のグレンに優しくしてくれた民達。ドグマが言っていた。ここに住む民達は生活の為にそれぞれ役割を全うしながら助け合って生きていた。それぞれが良い人生、良い流れを築く為に。そんな人達が居るここの生活をグレンは好きになりかけていた。一瞬思っただけであるが、故郷の様な平和なこの竜の遺跡にこれからも住みたい。そう少しだけ思えた。それを、こんな…こんな酷い形で終わらされた。まるであの時のキュアリーハートと同じだ。何の脈絡も無く平和な日々を終わらされた。「…許せねえ。」ポツリと小さく、そして力強い声でグレンは呟いた。ーー竜の民達をこんな風にした奴を、絶対に許さねえ!激しく怒るグレンは心の中でそう叫んだ。「あれ?まだ生き残りが居たんだ。」グレン達が向いてる方向とは反対方面から声が聞こえた。グレンとドグマはその声に反応し、振り返った。漆黒のローブを身に纏った緑髪の男と後方には黒い皮膚をした悪魔が20数体、そして他と比べて身長が低い奴が1人居た。すると漆黒のローブを纏った男がグレンの方を不思議そうに見ていた。「赤い髪…その魔力。…もしかして、グレン?」「何で俺の名前を知ってるんだ?」初対面と思っているグレンは突然面識の無い相手に名前を呼ばれた事に驚いていた。グレ
次の日の明朝4時半。この日もグレンとドグマはいつも通り川で魚を獲りに行った。「(もう慣れてしまったな。)」昨日と同じ様に手掴みで流れる様に魚を獲っていく。そして獲った魚を竜の遺跡へと運び、家に戻ってから朝食を食べた。「今日は龍脈樹には行かん。」グレンは朝食を食べた後、ドグマにそう言われ家を出た。この日、グレンはドグマに連れて来られたのは竜の遺跡から更に奥にある祠(ほこら)だった。その祠の入り口前には巨大な竜の像が建てられており、ドクマはその入り口の前に立ち止まった。「何だ、ここは?」グレンは立ち止まったドグマに質問する。「ここは[竜の試練洞(しれんどう)]。竜の民が龍技を極める為に用意された修行の場だ。竜の試練洞。この祠は竜の遺跡で祀られている龍神が、かつて龍技を極めたいと願う者の為に用意した神聖な修行場。数世代にわたり、伝承されてきた場所である。入り口は森の中にひっそりと隠されてあり、入り口から流れる空気が重い。龍脈樹(りゅうみゃくじゅ)の様に祠の中からまるで生き物の様に魔力が渦巻いているのを感じられた。「ここは龍技を極める為に用意された修行場。グレン、昨日説明した竜挐(りゅうだ)を覚えているな?」「ああ。3つの龍技を同時に使う事で起こる龍技の真髄の最終奥義。昨日、あんたが言ってたよな。」「そうだ。[心眼点睛]、[技之乖離]、[戮力体竜変]。この3つを極めた竜の民が使える奥義だ。この竜の試練洞では竜挐を極める為の修行を行う。」そしてドグマは竜の試練洞へと近づいていき、中へと入っていく。入った瞬間、空気が身体に張り付き乗し掛かる感覚がした。心眼点睛を習得してるグレンには周囲に充満している魔力の流れを目で見る事が出来る。試練洞の中に充満している魔力は、上からグレンに圧を掛ける様な流れ方をしている。まるでこの祠がグレンを試しているかの様だった。「生きてるみたいだろ?だが、試されるのはここからだ。」「ふん、だろうな。これくらいは試練の内には入らねえだろ。」「当たり前だ。こんな事で怖気つく様な奴をここに連れては来ない。」ドグマの発言から、この祠は修行場所であると同時に危険な場所なのだと感じた。その理由をグレンはまだ知らないが、すぐ分かる事になる。昨日までの修行が天国の様だったと。「…よし、もう着くぞ。」前を歩く
「いいか、ヒスイ。お前は竜の民の先導者である俺の後継者だ。これから民達を導いていかなければならない。」「………はい。」これは過去のドグマとヒスイのやり取りだ。ドグマは今の様な髭は無く、30代前半くらいの若々しい姿をしていた。そしてもう1人。娘であるヒスイ。彼女はドグマの言われた事を俯きながら元気のない声で返事をした。「竜の民は大昔の北と東の戦争に巻き込まれ、沢山の民達が命を落とした。このままでは竜の民は滅びてしまう。」「何としてでも、それだけは阻止しなければならない。」そう。竜の民が何故この様な少数民族なのか。それは戦争の被害に遭ったからである。丁度北と東の中間地点にある竜の遺跡は戦場に近く、軍事開発された魔法兵器の巻き添えによって多くの民が命を失った。元々少数であったが、それでも300人は居た竜の民も、年々子供の出生率も減少し今では50人にも満たない程だ。このままでは竜の民は絶えてしまう。ドグマはその焦りを感じていた。ヒスイを立派な先導者に育てあげ、竜の民達をこれからも繁栄させなければ。ドグマはその為、娘をより厳しく育てた。「何度言えば分かる!女だからと言って容赦はしない!」ドグマはまだ10歳前後のヒスイと龍技を使った組み手を行い、ボロボロになってうつ伏せに倒れている彼女を叱責する。またある日は同年代の人と遊ぼうとした時に。「……そうか。お前は先導者の道よりも友達と遊ぶ方が大事だと言うのだな。分かった。もういい…お前には失望した。」勿論本当に失望なんてしていない。ヒスイには先導者としての意志を早くから継いで欲しい。その想いから、時には厳しく突き放す様な言い方をした。自分の思い描く道をヒスイも歩めば、きっと竜の民達はこれからも耐える事なく安泰だ。ーー俺の代で絶えさせたくない!ドグマはこの様にヒスイのやる事1つ1つに口を出していた。しかし、ヒスイが19歳の時だった。突如書き置きだけ残し、娘は家を出てしまった。お父さんへ。私は彼と一緒に外の世界へ行きます。お父さんの理想の娘になれなくてごめんなさい。私は、今まで先導者になりたいと思った事は一度もありませんでした。ずっと黙っててごめんなさい。 ヒスイよりそれを見たドグマはようやく気が付いた。竜の民のこれからの未来を見ていたが、1番
ドグマに言われた通り朝の4時半に起きたグレンは、龍技の真髄の修行をする為にドグマの後ろに付いて歩いていた。早朝に起こされたにも関わらずグレンは眠そうな素振り1つ見せなかった。「初日で眠くはないのか?」「ああ。普段からあまり睡眠を取らない方だ。昨日はゆっくり出来た。」グレンは旅をしてる時もそうであるが、いつ自分の身に危険が起きても対処出来る様に熟睡は基本的にしない。その為、グレンにとっては明朝4時半と早い時間に起こされても睡眠時間的には十分であった。「…そうか。この程度なら生意気な口も普通に叩けるのか。よかろう、遠慮はいらんという事だな。」ドグマは余裕そうなグレンに対し、そう脅しをかける。「(そういえば、昔アガレフに修行を付けてもらう時も同じ様な事を言われたな。)」……思い出すだけでゾッとし、血の気が引いていくのが分かる。あの時は毎日失神するまでボコボコにされていたなぁ。アガレフの修行は本当にキツかった。「よし、着いたぞ。」真っ暗だった為、到着するまでどこを歩いているのか分からなかったが数十分後、ドグマが連れてきた場所は竜の遺跡にある川の上流の方だった。「川で修行するのか?」「そうだな。修行と言えば修行かな。足の裾を捲(まく)れ。今から川で魚を捕まえる。」そしてドグマはズボンの裾を膝上まで捲り上げると片足ずつ川に入っていく。そして川の真ん中辺りまで行くと水面の上で手掴みする様な構えをした。…バシャッ!素早く水面に手を突っ込み一瞬で掬(すく)い上げる。手のひらからはみ出そうな大きさの魚がドグマの手に捉えられ、捉えた魚を竹と藁で編んだ肩掛けの魚籠に入れる。そして再び魚を捕まえる構えに戻った。「…何してる?お前もやらんか。」「あ、ああ。」グレンもドグマと同じ様にズボンを膝上まで捲り上げて川に入ろうと右足を水につける。「うっ!……」あまりの冷たさに声が出てしまうグレン。朝方の気温の低い山奥の川の水。冷たくない訳が無い。「冷たいだろ?因みに魔法は一切使うなよ。修行にならんからな。」「…いや、魔法使わないと見えねえよ。」只でさえ冷た過ぎる水に慣れない中、真っ暗な時間帯で水中の魚が見えない。しかも道具は一切使わず難易度の高い手掴み漁。目を凝らして水面を見るが当然見える訳が無い。グレンは困惑してる中、隣でドグマは流れ
時は遡る事3日前。この日はカイル、エミル、ミーナが東の大国に到着したばかりの日であった。しかし、ここは北の大国と東の大国よりも更に北東部の奥にある場所。そこは一般の人が立ち入ると必ず道に迷うとされる竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)]と呼ばれる森林があった。その森林の中にある地面は深い裂け目や溝が幾筋も走り、獣道や細い道がそれに沿って複雑に分岐している。道はまるで生き物のように折れ曲がり、進んだはずの者を同じ場所へ戻し、方角の感覚を狂わせる。異常な磁場がコンパスの指針も狂わせる為、人の五感や魔力の流れを読めない人が立ち入れば一瞬で迷路へと変わる場所。この森林の中に1人の男が歩いていた。彼の名前は紅の悪魔祓い(デビルブレイカー)グレン。彼はレミールでミーナ達と合流したのだが、そこの国民に国を守る様に提案される。しかし、それを拒否したグレンは国民に危害を加えられた挙句、抵抗すると悪魔と言われて非難された。そしてグレンは自分のせいでミーナに危害が加わると考え、自ら1人になる道を選んだのだ。では何故彼が今この森林に居るのか?(おい、いい加減にしろ!いつまで歩き続けるつもりだ?もうかれこれ3日は歩いてるぞ?)グレンの中に居る悪魔、リフェル。本名強欲のマモンが話し掛ける。グレンはこの竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)に立ち入ってからかれこれ3日は経っていたのだ。「……この森、まるで生きてるみたいに場所が変化してる。ずっと同じところをグルグル回らされているみたいだ。」木々に囲まれて複雑に分岐した細い道を辿っていくも、いつの間にか元来た道に戻っている。更に元来た道をよく確認すると木々の形や生え方、地面の裂け目の形が少し違っていた。(何回この道来るんだよ!もう100回くらいこの光景見てるぞ!)「……いや、違う。よく見てみろ。この地面と木の並び方。少し違って見えないか?」(は?そんなもん覚えてる訳ないだろ!)「最初来た時はこの地面の裂け目は3本だった。だが今は2本。木も1本1本捻れてたのが真っ直ぐになってる。」(…長い事同じ光景を見て疲れてんのか?…いや、待てよ…グレン、何が言いたい?)何かに気付いたリフェルはグレンの考えを聞く事にした。「多分だが俺達が前に進めば進む程、木や道の形が変化して最初来た時と同じ光景を見せられる。けど、地面







