LOGIN血だらけの悪魔に対してカイルは1つも攻撃を喰らっていないため、無傷だった。
そして、悪魔はあることを思い出した。 「お…思い出したぞ!お前は、イフリークの守護神だな?」 「……」 カイルは返事を返すことなく、コクっと頷いた。 「まさか、神級魔導師が相手とは。だが、このPDO(プロジェクト・デビル・オペレーター)の俺が負けるなどありえない!」 そしてPDOは地面に手を置くと周りに地割れが起こった。 カイルとミーナはあまりの揺れに体制を崩しそうになった。 「お前の魔法は影だ!その影を無くしてやればお前は何もでき…」 すると悪魔の背後から別の影が発生した。 そしてその影から一本の細長い棘がPDOの体を貫いた。 「グハァッ!こっ、これは初級魔法だと?」 地割れがやむとカイルは再び領域を作った。 今度の領域は直径30m程あり、離れていたPDOもその圏内に入ってしまった。 カイルは2つの長剣をクロスに振るとPDOの体はクロス状に切り傷が入った。 「俺はあいにく、影の魔法は全て扱えるんでね。お前のその子供が使いそうな地属性魔法は何の妨げにもならねーんだよ。」 「くっ…そぉ…ふざけやがって!」 悪魔は紫色の塊を目の前に発生させた。 しかも、今度は今まで出してきた中でも最大級の大きさで直径50mほどあった。 「仕方がねえ、先にこの町を破壊してやる。そしたら俺も死ぬがお前らは確実に死ぬぜ!」 そしてPDOはその巨大な紫色の塊を手で押すと遥か上空に打ち上げた。 上空で直径100kmくらいまで広がるとそのまま地上に落ちてきた。 「まずいぞ!あれをこの国が受けたら本当に全員死んでしまうぞ!」 騎士達や町の人々は上空にある塊を見て混乱していた。 しかし、カイルだけは落ち着いていた。 そして呪文を唱え始めた。 「表裏に通づる闇の門よ、神に赴け!」 するとカイルの影の領域が更に黒さと範囲を増し、そこから巨大な影の手が発生した。 その影の手は紫色の塊を掴むと一緒に影の世界へ引きずり込んだ。 影によって魔力の塊は消えてしまい、騎士達は驚いていた。 「すごい…あのでっかい魔力の塊を消してしまった!」 「あぁ、あの人のあの魔法はいったいどうなってるんだ?知ってるか?」 1人の騎士が質問すると隣にいた騎士が説明した。 「俺が聞いた話だと、俺たちが使う魔法は普通魔力を消費して魔法を発動するというのは基本だ。だが、団長の魔力は消費する事はなく、今みたいに膨大な魔力を使っても息一つ切らさない。」 「えっ!?消費せずに魔法使えるのか!?」 「それが影の神級魔法の特徴らしい。あの影があるが故に団長は歴代最強の騎士団団長と謳われているんだ。そこらの悪魔や悪魔祓いじゃまず団長を倒す事は無理だろう。」 その騎士が言う通り、カイルの身体は無傷で疲れている様子はなかった。 一方PDOはさっきの魔力を放ったせいもあり、既に瀕死状態だった。 「どうした。もう終わりか?」 「ぐっ…ここまで力の差があったのか…」 PDOは膝を着き、悔しさで地面を叩いてた。 「そろそろケリをつけてやる。ミーナさん、俺の部下達の方に行きなさい。」 「え、出ても大丈夫なの?」 「少しだけなら大丈夫だ。すぐに済ませるから。」 カイルがそう言うとミーナは騎士達の所へ移動した。 再びPDOの方へ目線を変えると影がカイルの剣を黒く変色させた。 「さあ、次でお前を一発で仕留めてやるよ。覚悟しろ。」 そう言ってカイルはPDOの近くまで歩み寄った。 「これでおわー」 その瞬間、カイルの視界が一瞬で暗くなった。 「なっ!なんだ…目の前が見えないぞ!」 カイルはいつの間にか真っ暗な空間に立っていて目の前にはPDOがいなかった。 「ここはいったい…どこだ!あの悪魔はどこ行った!」 いくら叫んでも自分の声が返ってくるだけだった。 この謎の空間を作ったのはPDOだった。 この空間は外から見ると黒い球体の形をしていて、カイルはそこに閉じ込められていたのだ。 カイルを閉じ込めたPDOはニヤリと笑い、ミーナと騎士達がいる方向を向いた。 「ふふふ…俺が人間ごときにやられるわけねーだろ?これでお前らは確実に死ぬ。」 PDOはさっきよりも魔力を上げるとあたり一面に衝撃が発生し、ヒビの入った周りの建物が更に崩れていった。 「なんて魔力だ!…それよりも団長だ!団長をどうやって閉じ込めたんだ!」 さっきまで優勢だったカイルがあっけなく閉じ込められたのには理由があった。 その理由はとても単純だった。 「簡単な事だ。真っ暗闇で影が出せると思うか?常識的に考えたら一発でわかるだろ?馬鹿め。こいつは影に頼りすぎたようだな。」 するとPDOはカイルが入った黒い球体を空中に浮かばせた。 そして黒い球体の周りから黒雲が発生し、黒い球体を輪っか状に囲んだ。 「消えろ!イカズチと共に!」 そして黒雲から青白い雷が発生し、黒い球体を襲った。 球体の中にいるカイルはその雷によって悲鳴をあげていた。 「ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」 「あははは!!この球体に魔法を与える事で中にいるこいつはその魔法を食らう事になるんだよ!」 「だ、団長!!!!…おのれ!許さないぞ!!」 騎士達はPDOの雷魔法を止めようとPDOに斬りかかるがPDOは軽く息を吹きかけただけで竜巻が起こり、騎士達は飛ばされていく。 「おいおい、いーのかよ?こいつあと5分もすれば死んでしまうぞ?…っいて!」 後ろから石をぶつけられたPDO。 その投げた人物はミーナだった。 「おい、お嬢ちゃん。死にたいのか?」 顔は笑っているが目は本気で殺す気でいるPDO。 しかし、そんな目に対してミーナは言った。 「あなた達って、どうして人間をこうまでして苦しめるの?」 「は?」 「あなた達悪魔は、どうして罪のない人たちをここまでして苦しめるのかって聞いてるのよ!」 そしてそれと同時に持っていた石をPDOに投げた。 しかし、その投げた瞬間にミーナの目の前に移動し腕を振り上げたところで止めた。 「そんなもん…人間を殺して食う!人間は俺たちからすれば食料に過ぎないからだ!だからてめえも俺ら悪魔に食い殺されろ!!」 そして腕を振り下ろそうとした。 しかし、その瞬間。ミーナの体の周りから強烈な光が発生した。 その光で一瞬目がくらんだPDO。振り下ろそうとした手で目を押さえた。 「なんだ…今の光は?」 PDOは光が消えてもミーナに変化は見られず、不思議に思った。 何が起こったかも気づいていないミーナは構わずに口を開いた。 「あなた達悪魔のせいで…親友だった人、親だった人、学校の仲間、みんなそれぞれの関係があってそれぞれ楽しい生活があるのよ!そんな大切な存在を壊すあなた達を、私は許さない!」 ミーナが言い終えると悪魔は顔に血管を浮かばせながらミーナに歩み寄り。 「はぁ?大切な存在だと?俺たち悪魔はなぁ、その大切な存在をぶっ壊すだけで最高に欲求が満たされるんだよ!何が楽しい生活だ!人間は俺たちの腹を満たせればそれで良いんだよ!」 そして再び腕を振り上げると、ミーナの顔にめがけて一気に振り下ろそうとした。 ゴキッ… その場に一瞬鈍い音が鳴った。 それはミーナから聞こえた音ではなく、PDOから聞こえた音だった。 「グァァァァアアア!!!!腕ガァァァァ!!」 PDOはどういう訳か、腕が逆方向に捻れた状態になっていた。 「グァ…ァァ…貴様!一体何をした!」 「何もしてないわ!自分で腕をそこまで持ってったんでしょ?」 「違う!確かに当たった…当たったはずだ!」 PDOが言うように腕は確かにミーナに当たっていたのだ。 しかし、2人とも気づいていなかったがこの時にすでにある出来事が起こっていた。 それは無意識に発動したミーナのバリヤーの様なものがPDOの腕に当たった途端反射し、その反射の威力が強すぎた為腕が後ろ向きに360°捻れてしまったのだった。 「まさか、この女が魔法を使えるとは…だが、これは何の魔法だ…衝撃系の魔法では俺の腕をここまでは…」 「それは、こいつの中に眠ってる魔力が特別だからだ。」 すると突然何処からか声が聞こえてきた。 「だ、誰だ!今の声はー」 その瞬間、捻れた腕が地面に落ちた。 あまりの速さに痛みがなかったPDO。しかし、次の瞬間強烈な痛みが襲った。 「ぐっ…グァァァァアアア!!!!」 「え、何!?何が起こってるのよ!」 ミーナも何が起こったのか分からず、混乱していたが次の瞬間ハッと気づいた。 「もしかして…この感じは…。」 PDOの背後に空間の裂け目が発生し、その中から黒いローブを身に纏った赤髪の男が現れた。 「グレン!!」 「何っ!まさか紅の悪魔祓いか!」 PDOは思い出した。こいつが今回の目的である事を。 「随分と派手に暴れてたみたいだな。悪魔…いや、悪魔の実験体。PDO(プロジェクト・デビル・オペレーター)」 「プロジェクト・おぺれーた?」 「なぜ俺の事を…」 その瞬間、PDOの体が一瞬で切り刻まれそしてカイルが閉じ込められている黒い球体まで破壊された。 「ばっ、馬鹿な!たった一瞬で…」 「お前、隙だらけだな。こんなのが本当に悪魔が改造したやつなのか?おい、ミーナ。あの黒い球体に入ってた男を助け出せ。こいつは俺がやる!」 そう言ってグレンは黒い炎を体に纏った。 「黒い…炎だと?」 「そうだ。これはお前らを狩る為の炎だ。」 そう言ってグレンは拳に炎を纏い、PDOの顔面に拳を入れた。 拳が顔に衝突すると小さな魔法陣が魔法陣が発動し、炎の威力が上がるとPDOは勢い良く燃えながら吹っ飛んだ。 「アアアア!!!あぢい!あぢいよぉ!!」 暑さと痛さでのたうちまわるPDO。そんな事は御構い無しにグレンは魔法を唱えた。 「地獄に燃える黒炎、燃やし尽くせ!」 そう唱えるとPDOの体に燃えている黒炎が更に炎圧を増し、勢い良く燃えた。 「グァァァァアアア!!!…これが、悪魔殺しの炎か…なるほど、この炎のせいで他の悪魔どもはやられるのか。」 するとPDOは魔法で体に燃えてる黒炎を体内に取り込んだ。 「なんだ…俺の炎を取り込みやがった!」 「はぁ、はぁ、…俺を誰だと思ってる。改造悪魔のPDO、ベガ様だ!今の炎を取り込んだことで俺の体は炎に耐性ができた。お前の炎はもはや何の役にも…」 シュシュンッーーーッ 光の速さでベガを切り刻み、切り刻んだあとグレンは回し蹴りでベガを吹っ飛ばした。 「がはぁっ!馬鹿な!今のは炎じゃ…」 「今のは光属性の最上級魔法だ。そしてこれが雷の最上級だ!」 するとグレンの指先から一筋の雷がベガの体を貫通させた。 「そんな…馬鹿な…人間が複数の属性を…」 そしてそのまま、ベガの息が絶えた。 「意外とあっけなかったな…PDO。注意する必要は無かったみたいだな、リフェル。」 グレンはリフェルと呼ぶと、体の中にいる悪魔がそれに返事した。 (いや、どうだかね。まだ油断は出来ねえぞ。) その声に気付いたミーナがリフェルに声をかけた。 「え?今の声はもしかしてこの前の…」 (よぉ、久しぶりだな。) グレンはリフェルとミーナが会話をしている事に驚いたのか自分の胸に向かって言った。 「おい、お前まさかあいつと対話したのか?」 (ああ?別にいーだろが。どっちにしろこいつとは一緒に旅する仲間じゃねーか?) 「どの口が言ってやがる。人間を玩具とか言ってる奴がそんな事思うわけないだろ。」 (あっ、バレたか。あはははは!!) まるで独り言の様に見えるが明らかにグレンとは違う存在と喋っているとミーナは分かっている。 しかし、この光景を初めて見る者は不思議でしかなかった。 さっきまで気絶していたカイルは場の状況を理解しようとしていた。 「これは…あの悪魔がやられている?…ん?…あの子の目の前にいるのはもしかして噂の…だが、何を独りで言ってるんだ?」 グレンの中にいる悪魔に気づいていないカイルは不思議そうに見るしかなかった。 カイルが目を覚ました事に気付いたミーナはカイルに声をかけた。 「あ、カイル君目を覚ましたみたいだね。」 「あいつが、騎士団の団長。イフリークの守護神か。」 グレンはカイルを見た瞬間、そいつが団長だという事を直感だけで判断した。 「そういう君は12騎士長が言ってた紅の悪魔祓いか。見る限りかなり出来そうだね。」 そう言ってカイルは両手に持っている剣を握りしめた。 「前からちょっと君の力を試したかったんだぁ…いいよね?」 「えぇ!?急に戦うの!それは流石にちょっとやめたほうが…」 カイルは戦う気満々の目でグレンを見つめ、それを止めようとするミーナ。 しかし、グレンはそれに対して。 「それは、俺に対して喧嘩をふっかけてると受け取っていいのか?」 「どう捉えても構わないです。ただ、悪魔祓いと呼ばれる君の実力を知りたいだけですよ。」 「…いいだろう。お前のその自信は魔力で大体分かる。受けて立とー」 承諾した瞬間、2人の剣が衝突し金属音が辺りに響き渡った。 その金属音と同時に2人の魔力がぶつかる事で爆風が発生した。一方、カイルとエミルは他の八握剣(やつかのつるぎ)のメンバーと合流する為に移動を続けていた。そしてようやく辿り着いた時、目の前の光景を見て驚愕した。そこには。「え、何で?…何で、ゴウシさん達が…。クロツチさんまで!」「スイゲツさん!ルキアさん!ヒナタさん!」何と、先程まで特攻部隊を圧倒していた筈のしかも八握剣である5人が血を吐いて倒れていたのであった。何があったのか?それは、数分前に遡る。特攻部隊を倒し、次の地点へと移動を開始していた5人。5人はある1人の少女を見つけた。濃いピンクの髪を2つに括り、右目には白い眼帯を付けている少女。少し気が病んでそうな見た目をしていた。一見すると戦いには無縁そうな感じであったが、北の大国の象徴である純白の軍服を身に纏っていたが、女性の為か下は白いスカートになっていた。間違いなく、ウンディーネ軍の先行部隊。「ゴウシさん。ここは俺がやるよ。」そう言ってスイゲツは自身の刀を鞘から抜き、目の前の少女の方へと歩いていく。少女は何故か地面にへたり込んでおり、ビクビクと震えていた。「ヒィィ!ごめんなさい!ごめんなさい!」少女は怯えながらひたすらに謝り続ける。「え?」「私、もう戦えません。戦いが怖くて逃げてきたのです。…ですから私を、襲わないで下さい!」左目から涙を流しながら懇願する少女。足元には自分の武器らしい、白くて細長いレイピアが置かれている。「そう言われても、あんた敵だからな。」「そうですよね。私の言う事なんて、誰も信じないですよね?」すると少女は足元に置いていたレイピアを取り出した。それに気付いたスイゲツは刀を構えるも、少女の行動を見て立ち止まる。少女は手に持ったレイピアの先端を自分の首元に向けていた。「分かりました。私の事が信用出来ないと言うのであれば今ここで、死んで見せます!」「お、おい!やめろ!何も自分からそんな事する必要なんて…」スイゲツは自殺しようとする少女を止めようとするも、少女は笑顔で。「ううん、良いんです。それで私の疑いが晴れるのなら。」「さようなら。」そして少女は自分の喉元に向けたレイピアをそのまま強く刺した。ザシュッ!!「…ゴフッ!」血を吐いてその場に倒れたのは、スイゲツであった。「通りすがりの、剣士さん。」少女は自分の喉元を刺したまま、倒れた
瞬く間に特攻部隊は部隊長であるボルケニアと副部隊長であるガロウが倒された。特攻部隊の副部隊長は残り2人。その内の1人が報告を聞いて驚いていた。「何だと!ボルケニア部隊長とガロウがやられたと!?」「はい!やったのは八握剣(やつかのつるぎ)の奴らです!その他にも多数の死者が!」「奴らめ!バラけて動くのでは無く、纏って各個撃破を狙ってるのか?…だが、戦場で戦力を分散させないのは逆に言えば守りが手薄になってるという事。」「皆の者!このままノーム王が居る城に向かう!八握剣以外の侍は大した事は無いから、狙うなら今だ!」「「ハッ!!」」2人目の副部隊長であるエンジュは部下の軍人に向けて命令を下すと、それにより部下達の士気が上がり走り出す。手薄になった防御網を突破するのは今の内だと言わんばかりに。しかし、その考えは大誤算であった。北の大国は東の大国の戦力を八握剣(やつかのつるぎ)と裏切ったネルだけだと思っており、それ以外の戦力については考えていなかった。当然、カイル達が居る事なんて想像すらしていなかった。突撃していた部下達。すると突然、バタバタと部下達が倒れていった。「な、何事だ!?」副部隊長のエンジュは目の前で突如倒れ出した部下達を見て言った。「エンジュ副部隊長!前方に2人の影が見えます!」「何!?」目で確認すると部下が言った様に、そこには2人の人影が見えた。1人は身長が低いが2本の黒い刀を持った黒髪の男。もう1人は黒いタンクトップとショートパンツを履いた水色髪の女性であった。そう、カイルとエミル。2人は一緒に行動しており、先ほど部下達が急に倒れたのはカイルの影の円展開で、影に入った部下達を斬ったからだ。エンジュは目の前のカイルの服装を見て気付いた。「そのマントと黒い服。間違いない、お前はイフリークの騎士団団長!カイル・エリオン!」「何故イフリークの騎士団が東の大国側に!?」全く想定していない状況に理解が追いつかないエンジュ。それに対してカイルは答えた。「この戦争でこの国の被害を減らす為だよ。」「悪いけど、君達をノーム王の所へは行かせない!」そう言ってカイルは2本の黒い刀である暗影蛇と黒纏蛇を構えた。「お前ら!撃て!撃てぇ!!」エンジュは部下に発砲命令を下し、即座に部下達は銃でカイルとエミル達を撃ち始める。しかし、
魔導砲・アステリアにより、火の海と化したノームの街。大都会の象徴であった何十階もある建物はその威力によって高い部分は消失した。燃えた瓦礫が辺りに散らばった地面は、平和な国から地獄の戦場へと一気に変えられる。上空の魔導戦艦はその変わり果てたノームを見下す様に宙に浮いていた。そして魔導戦艦から放たれた無数の戦闘機は地上に向かって急下降し、機関銃の様な物を地上に撃ち放つ。ズドドドドドドド!!!!機関銃の様な物から放たれるのは1発1発が魔力の籠ったエネルギー弾であり、地上に撃ち込まれた部分からは爆発が連鎖的に起きる。徹底的にこのノームを潰そうとしているのが分かる。小国など武力の低い国はこの攻撃で大半が機能不全に陥るだろう。しかし、この東の大国ノームは違う。魔力で動かす機械や医療など、他国よりも繊細な技術面が発展している先進国である。当然、軍事に関する機械も最先端の技術が搭載されているのだ。東の大国には風狼機巧工房(ふうろうきこうこうぼう)と呼ばれる、飛行艇や四輪駆動車を製造する機巧工房が存在する。(第31話参照)性能重視で機械が造られている東の大国が誇る技術の叡智(えいち)がこの場所に保管されている。その機巧工房から東の大国が造り出した戦闘機が上空へ飛び立ち、北の大国の戦闘機へ向かって行く。北の大国の戦闘機が100機を超える戦闘機に対し、東の大国側の戦闘機は40機程度。圧倒的に戦力の差は北の大国が上である。しかし、それはあくまで戦力差の話。最新の技術を搭載された戦闘機はその戦力差すらものともしなかった。東の大国の戦闘機はステルス機能が搭載されており、その機能によって戦闘機は透明化する事が可能。それにより、視覚的に見えなくなったところで東の大国側の戦闘機が反撃を開始する。エネルギー弾も北の大国の戦闘機とは違い自動(オート)で狙いを定める為、どれだけ戦闘機を速く操縦してても狙いがブレる事は無い。透明化した状態のまま自動で相手の狙いを確実に定め、一方的に攻撃を仕掛ける事で数の戦力差を埋める。これが、技術力の高い東の大国の戦闘機の力。数の量産は難しくも、その機能性は北の大国の戦闘機を遥かに上回っていた。視覚的に確認出来ず、例え戦闘機に乗った操縦士の魔力を感知したところで、気付いた時には既に撃ち落とされてしまうのだ。そして全ての北
一方、魔導戦艦を撃破した東の大国側は更なる北の大国の攻撃に備えて避難誘導が行われていた。次も都市部を襲撃してくるであろう北の大国の動向を予想し、国民達は総面積20㎢あるノーム王の城の城壁内へと誘導される。勿論全員を城壁内に誘導は出来ない。そこでグロードやネルが持つ空間移動の力で、子供を優先して他国へ転移させる事にした。行き先は西の大国イフリークと南の大国シルフ。両国は復興作業が順調に進んでおり、既に避難の受け入れが整っている状態であった。カイルはイフリークの騎士団に。そしてシルフの王の証を継承したフィナは大国に連絡した事によりスムーズに避難誘導が行えている。そしてカイルの両親と妹のレイアはグロードに空間転移でイフリークに転移させられる予定であった。「父上、母上。レイア。戦争が終わったら必ず迎えに行くから。」「うむ。カイル、無事を祈る…。」「カイル…絶対に生きて帰って来てね。」小さく返事するカイルの父親であるが、やはり心配なのか表情は暗かった。母親のカルラはやはり心配であり、涙を流しながら言った。そしてレイアはカイルに抱きついた。「…お兄ちゃん」強く抱きしめるレイアはカイルの胸に顔を埋める。「…大丈夫。大丈夫だから。」そんなレイアに優しく頭を撫でながらそう言うと、レイアはゆっくりとカイルから離れた。そして視線を後ろに居るミーナ、エミル、ライク、ニケルに向ける。「ミーナちゃん。エミルお姉ちゃん。」まずはミーナとエミルに向かって言う。「レイアちゃん。…また戻ったら一緒にお話ししよ!」両手を膝に付き、少ししゃがんだ姿勢のまま笑顔で言うミーナ。「そうね。レイアちゃんも、気をつけるのよ。」レイアの頭をポンポンと撫でてあげるエミル。「うん!またいっぱいお話ししよ!」そして今度はライクに向けて言った。「ライクお兄ちゃん!無茶な事は絶対にしないでね!」「…無茶な事しねーと勝てねえんだよ。」相変わらず、レイアに対してもぶっきらぼうに返事するライクであるがその返事に泣きそうになりながら。「だって、ライクお兄ちゃん1人で突撃して行きそうで怖いんだもん!」「わ、悪かった!ちゃんと気を付けるって!」泣きそうになるレイアを慌てて宥めるライク。そして最後にニケルに向いた。「ニケル様…。」「レイアちゃん…。」レイアとニケルはし
他国への軍事侵攻と併合を繰り返すことで領土を拡大している巨大な大国。ここは北の大国ウンディーネ。魔力資源と軍事拡張を国家存続の核とする極端な軍事国家であり、その統治思想は「戦果こそが存在価値」という歪んだ成果主義で統一されている。戦争で功績を挙げた者は地位・富・名誉を得る権利が与えられ、失敗者や非戦闘員には価値がほぼ与えられない。戦争で功績を挙げられなくとも、国家の軍事力拡大に繋がる軍資金を納めれば国から認められる。この仕組みを国民達に徹底させる為、この国では目に見える形で国民を上級、中級、下級という風に位置付け差別化した。どういう事か?その位置付けは国民の居住地域で分けられた。上級は名前の通り、貴族や戦争功労者など富裕層を指す。中級の国民は主に庶民の人達であるが、この者達は努力次第では軍に入隊し功績を上げる事で上級へと位を上げる事が出来る。そして下級は名前の通り、国の中でも最下層の人間の事を指す。大抵の下級国民が暮らす場所は政府の目に届かない場所に位置している為、治安が悪く劣悪な環境。ここには国に対する反逆行為を行った者、犯罪を行った者、北の大国の軍事侵攻により領土を奪われたその土地の人達が住んでいた。以前ライクとニケル、グロードが北の大国に訪れた際に出会った孤児の兄弟も下級国民であった。(第24話参照)下級国民は全てにおいて最底辺であり、人権というものは殆ど存在しない。これは領土を奪った他国の人間が自国に対して反撃しない為の抑止力にもなるが、それだけでは無い。先程説明した様に中級国民も犯罪や反逆行為を行う事で下級国民に成り下がる可能性があり、国民はそれを恐れていた。ーーこんな底辺の人間にはなりたく無い。こうして劣悪な環境の中で過ごす最底辺に自分もなる可能性がある事を知らしめる。それにより、国民全員に危機感を持たせながら国の為に必死で働かせられるのだ。また、人間とは自分より下を見て優越感に浸る生き物。自分達よりも底辺の人間が居る事により優越感に浸らせれば、国民のストレスの捌け口は自然と下級国民へと移る。この「働き蟻の法則」にも似た様な差別化の仕組みが、北の大国という巨大な軍事国家を成り立たせていた。「軍事の為に働かざる者、人としての権利を得るべからず。」北の大国にはその様な言葉が昔からあった。この国民の差別化。一見
魔導戦艦。それは北の大国が保有する、空中を駆ける全長200m、全幅80m、全高75mを誇る巨大飛行戦艦である。戦艦の全方位には大量の巨大な大砲が敷き詰められてある。それら全て、[魔導砲・アステリア]と呼ばれる以前グレンが魔導兵器であるレイクと戦った時に使用されていた大砲が搭載されている。(第36話参照)軍事大国である北の大国ウンディーネ軍の技術開発局が開発したこの戦艦。実は東の大国ノームにとって因縁のある存在であった。「魔導戦艦。我ら東の大国の技術を盗んでそれを軍事転用した巨大飛行戦艦か。」バンジョウの言う通り、この魔導戦艦は約100年前に東の大国が開発した魔力式四輪駆動車の技術を改良されて作られた。100年前、東の大国ノームにやってきた北の大国ウンディーネ出身の亡命者が居た。ウンディーネは諸国周辺の国に戦争を仕掛けては勝利して自国の領土を拡大していく軍事国家であり、戦争は絶対正義であるかの様に指導される。戦争、又は軍事に反対的な意見を持つ人間は処罰の対象となる為、それが嫌で亡命する北の大国の人間は当時珍しく無かった。ノームはそのウンディーネからやってきた亡命者に仕事を与え、彼は元々軍の整備士の仕事をしていた為、機械的な物を作る仕事を与えた。しかし、これは大きな間違いに繋がるのであった。数年後、その亡命者は突如ノームから居なくなり、その数年後にウンディーネ軍がノームに対して戦争を仕掛けてきた。当時ウンディーネの魔導戦艦が、ノームで作られていた魔力式四輪駆動車と全く同じ技術を使用して作られていた為、それに気付いたノームの国民は怒った。ーー亡命してきたあの男は、我々の技術を盗む為のウンディーネ軍が遣わせたスパイだったのだと。そして100年前、この事がきっかけで北と東の大国は規模は小さいが戦争に発展しており、戦争が終結してからその後4大国間同士で不可侵条約は結ばれているが未だ北と東の関係性は悪いままである。(第16話参照)今までは嫌がらせの様な北の大国のミサイルを東の大国近辺に放っていたが、今回の様な魔導戦艦で領空に入ってきた事は一度も無かった。明らかな領空侵犯(りょうくうしんぱん)であり、東の大国ノームに対する威圧行為だ。到底許される事では無い。「このままでは国民が危険だ!一刻も早く迎え撃つ準備を!」ギンジは八握剣(やつかのつるぎ)
時は少し遡り、場面はミーナとイフリークの国民達に変わる。現在、彼女らはティラーデザートとは別の場所で窮地に立たされていた。大量の悪魔達が周囲を取り囲み、エミルと騎士団の人達が応戦している。それを何もできないまま只々見ているだけのミーナとイフリークの国民達。国民の中には、騎士達が守らず心臓を取られてしまう者もいた。何故、この様な事になったのか。どうしてティラーデザートから離れた場所にいるのか。現在に至るまで更に30分程、時間を遡る。シルフを目指し、猛暑の中を歩き続けるイフリークの国民達は途中で大きなクレーターを発見した。「何だ、この大きなクレーターは。隕石でも落ちたのか?」「
この時の俺はどんな人だったのか、今でも鮮明に覚えている。しかし、どうしても思い出せない事が1つある。自分の本当の名前だ。名前は悪魔祓いになったと同時に捨てたからだ。今も過去の記憶は覚えてても、自分の名前に関する記憶だけはどうしても思い出せない。覚えているのは、楽しかった日常が一夜にして地獄に変わってしまった事。そして…あの時俺を逃してくれた俺の兄の最後を、俺は今でも覚えている。11年前ーキュアリーハート。それは(癒しの心)という意味を込められた平和の国。この国は東西南北にある四大国の中心に位置している。四大国に比べて経済力があるとか、規模が特別大きいなどそういった事はなく
「月の民殲滅は確かにシルフの国王が提案し、様々な国の魔道士達を招集させて殲滅していく、というのが一般的に知られている事です。」 「はい、俺もそういう風に聞きました。」 「でも本当は違うの。シルフの国王は元々平和主義を心掛けていた心の優しい人で当時も月の民殲滅には反対していたのです。けど、あの男が来てからシルフの国王は変わりました。」 「それは、さっき言っていた思考を操る魔法か?」 フィナの口ぶりで何を言いたいのか察したグレンが口を挟んだ。 「はい。12年前に突然やって来たハイド・スペクターが原因だと思います。彼は何故なのか分かりませんが会った当初から国王に気に入られ、その日
その頃、ミーナ達はグレンとカイルが乗った馬車と離れてしまい、現在は残った人達を騎士団達は馬車の外に集めさせた。しかし、集められた一般の人達は数日前の事件から現在まで散々な目に遭っている為不満が高まっているのか騎士団の人達に文句を言っていた。「どういう事なんだよ!馬車が無くてどうやって移動するんだ!」「お前ら騎士団だろ!俺たち今物凄く困ってるの見てわかんねーのかよ!」「そうよ!私達はこれからどーなるのよ!」「何とかしろ!騎士団だろ!」口々に罵声を飛ばす一般の人達。無理もない。つい数日前までは平和に過ごしていたのだ。急にこんな事が続けば誰だって普通じゃいられなくなる。しかし、一般