LOGIN血だらけの悪魔に対してカイルは1つも攻撃を喰らっていないため、無傷だった。
そして、悪魔はあることを思い出した。 「お…思い出したぞ!お前は、イフリークの守護神だな?」 「……」 カイルは返事を返すことなく、コクっと頷いた。 「まさか、神級魔導師が相手とは。だが、このPDO(プロジェクト・デビル・オペレーター)の俺が負けるなどありえない!」 そしてPDOは地面に手を置くと周りに地割れが起こった。 カイルとミーナはあまりの揺れに体制を崩しそうになった。 「お前の魔法は影だ!その影を無くしてやればお前は何もでき…」 すると悪魔の背後から別の影が発生した。 そしてその影から一本の細長い棘がPDOの体を貫いた。 「グハァッ!こっ、これは初級魔法だと?」 地割れがやむとカイルは再び領域を作った。 今度の領域は直径30m程あり、離れていたPDOもその圏内に入ってしまった。 カイルは2つの長剣をクロスに振るとPDOの体はクロス状に切り傷が入った。 「俺はあいにく、影の魔法は全て扱えるんでね。お前のその子供が使いそうな地属性魔法は何の妨げにもならねーんだよ。」 「くっ…そぉ…ふざけやがって!」 悪魔は紫色の塊を目の前に発生させた。 しかも、今度は今まで出してきた中でも最大級の大きさで直径50mほどあった。 「仕方がねえ、先にこの町を破壊してやる。そしたら俺も死ぬがお前らは確実に死ぬぜ!」 そしてPDOはその巨大な紫色の塊を手で押すと遥か上空に打ち上げた。 上空で直径100kmくらいまで広がるとそのまま地上に落ちてきた。 「まずいぞ!あれをこの国が受けたら本当に全員死んでしまうぞ!」 騎士達や町の人々は上空にある塊を見て混乱していた。 しかし、カイルだけは落ち着いていた。 そして呪文を唱え始めた。 「表裏に通づる闇の門よ、神に赴け!」 するとカイルの影の領域が更に黒さと範囲を増し、そこから巨大な影の手が発生した。 その影の手は紫色の塊を掴むと一緒に影の世界へ引きずり込んだ。 影によって魔力の塊は消えてしまい、騎士達は驚いていた。 「すごい…あのでっかい魔力の塊を消してしまった!」 「あぁ、あの人のあの魔法はいったいどうなってるんだ?知ってるか?」 1人の騎士が質問すると隣にいた騎士が説明した。 「俺が聞いた話だと、俺たちが使う魔法は普通魔力を消費して魔法を発動するというのは基本だ。だが、団長の魔力は消費する事はなく、今みたいに膨大な魔力を使っても息一つ切らさない。」 「えっ!?消費せずに魔法使えるのか!?」 「それが影の神級魔法の特徴らしい。あの影があるが故に団長は歴代最強の騎士団団長と謳われているんだ。そこらの悪魔や悪魔祓いじゃまず団長を倒す事は無理だろう。」 その騎士が言う通り、カイルの身体は無傷で疲れている様子はなかった。 一方PDOはさっきの魔力を放ったせいもあり、既に瀕死状態だった。 「どうした。もう終わりか?」 「ぐっ…ここまで力の差があったのか…」 PDOは膝を着き、悔しさで地面を叩いてた。 「そろそろケリをつけてやる。ミーナさん、俺の部下達の方に行きなさい。」 「え、出ても大丈夫なの?」 「少しだけなら大丈夫だ。すぐに済ませるから。」 カイルがそう言うとミーナは騎士達の所へ移動した。 再びPDOの方へ目線を変えると影がカイルの剣を黒く変色させた。 「さあ、次でお前を一発で仕留めてやるよ。覚悟しろ。」 そう言ってカイルはPDOの近くまで歩み寄った。 「これでおわー」 その瞬間、カイルの視界が一瞬で暗くなった。 「なっ!なんだ…目の前が見えないぞ!」 カイルはいつの間にか真っ暗な空間に立っていて目の前にはPDOがいなかった。 「ここはいったい…どこだ!あの悪魔はどこ行った!」 いくら叫んでも自分の声が返ってくるだけだった。 この謎の空間を作ったのはPDOだった。 この空間は外から見ると黒い球体の形をしていて、カイルはそこに閉じ込められていたのだ。 カイルを閉じ込めたPDOはニヤリと笑い、ミーナと騎士達がいる方向を向いた。 「ふふふ…俺が人間ごときにやられるわけねーだろ?これでお前らは確実に死ぬ。」 PDOはさっきよりも魔力を上げるとあたり一面に衝撃が発生し、ヒビの入った周りの建物が更に崩れていった。 「なんて魔力だ!…それよりも団長だ!団長をどうやって閉じ込めたんだ!」 さっきまで優勢だったカイルがあっけなく閉じ込められたのには理由があった。 その理由はとても単純だった。 「簡単な事だ。真っ暗闇で影が出せると思うか?常識的に考えたら一発でわかるだろ?馬鹿め。こいつは影に頼りすぎたようだな。」 するとPDOはカイルが入った黒い球体を空中に浮かばせた。 そして黒い球体の周りから黒雲が発生し、黒い球体を輪っか状に囲んだ。 「消えろ!イカズチと共に!」 そして黒雲から青白い雷が発生し、黒い球体を襲った。 球体の中にいるカイルはその雷によって悲鳴をあげていた。 「ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」 「あははは!!この球体に魔法を与える事で中にいるこいつはその魔法を食らう事になるんだよ!」 「だ、団長!!!!…おのれ!許さないぞ!!」 騎士達はPDOの雷魔法を止めようとPDOに斬りかかるがPDOは軽く息を吹きかけただけで竜巻が起こり、騎士達は飛ばされていく。 「おいおい、いーのかよ?こいつあと5分もすれば死んでしまうぞ?…っいて!」 後ろから石をぶつけられたPDO。 その投げた人物はミーナだった。 「おい、お嬢ちゃん。死にたいのか?」 顔は笑っているが目は本気で殺す気でいるPDO。 しかし、そんな目に対してミーナは言った。 「あなた達って、どうして人間をこうまでして苦しめるの?」 「は?」 「あなた達悪魔は、どうして罪のない人たちをここまでして苦しめるのかって聞いてるのよ!」 そしてそれと同時に持っていた石をPDOに投げた。 しかし、その投げた瞬間にミーナの目の前に移動し腕を振り上げたところで止めた。 「そんなもん…人間を殺して食う!人間は俺たちからすれば食料に過ぎないからだ!だからてめえも俺ら悪魔に食い殺されろ!!」 そして腕を振り下ろそうとした。 しかし、その瞬間。ミーナの体の周りから強烈な光が発生した。 その光で一瞬目がくらんだPDO。振り下ろそうとした手で目を押さえた。 「なんだ…今の光は?」 PDOは光が消えてもミーナに変化は見られず、不思議に思った。 何が起こったかも気づいていないミーナは構わずに口を開いた。 「あなた達悪魔のせいで…親友だった人、親だった人、学校の仲間、みんなそれぞれの関係があってそれぞれ楽しい生活があるのよ!そんな大切な存在を壊すあなた達を、私は許さない!」 ミーナが言い終えると悪魔は顔に血管を浮かばせながらミーナに歩み寄り。 「はぁ?大切な存在だと?俺たち悪魔はなぁ、その大切な存在をぶっ壊すだけで最高に欲求が満たされるんだよ!何が楽しい生活だ!人間は俺たちの腹を満たせればそれで良いんだよ!」 そして再び腕を振り上げると、ミーナの顔にめがけて一気に振り下ろそうとした。 ゴキッ… その場に一瞬鈍い音が鳴った。 それはミーナから聞こえた音ではなく、PDOから聞こえた音だった。 「グァァァァアアア!!!!腕ガァァァァ!!」 PDOはどういう訳か、腕が逆方向に捻れた状態になっていた。 「グァ…ァァ…貴様!一体何をした!」 「何もしてないわ!自分で腕をそこまで持ってったんでしょ?」 「違う!確かに当たった…当たったはずだ!」 PDOが言うように腕は確かにミーナに当たっていたのだ。 しかし、2人とも気づいていなかったがこの時にすでにある出来事が起こっていた。 それは無意識に発動したミーナのバリヤーの様なものがPDOの腕に当たった途端反射し、その反射の威力が強すぎた為腕が後ろ向きに360°捻れてしまったのだった。 「まさか、この女が魔法を使えるとは…だが、これは何の魔法だ…衝撃系の魔法では俺の腕をここまでは…」 「それは、こいつの中に眠ってる魔力が特別だからだ。」 すると突然何処からか声が聞こえてきた。 「だ、誰だ!今の声はー」 その瞬間、捻れた腕が地面に落ちた。 あまりの速さに痛みがなかったPDO。しかし、次の瞬間強烈な痛みが襲った。 「ぐっ…グァァァァアアア!!!!」 「え、何!?何が起こってるのよ!」 ミーナも何が起こったのか分からず、混乱していたが次の瞬間ハッと気づいた。 「もしかして…この感じは…。」 PDOの背後に空間の裂け目が発生し、その中から黒いローブを身に纏った赤髪の男が現れた。 「グレン!!」 「何っ!まさか紅の悪魔祓いか!」 PDOは思い出した。こいつが今回の目的である事を。 「随分と派手に暴れてたみたいだな。悪魔…いや、悪魔の実験体。PDO(プロジェクト・デビル・オペレーター)」 「プロジェクト・おぺれーた?」 「なぜ俺の事を…」 その瞬間、PDOの体が一瞬で切り刻まれそしてカイルが閉じ込められている黒い球体まで破壊された。 「ばっ、馬鹿な!たった一瞬で…」 「お前、隙だらけだな。こんなのが本当に悪魔が改造したやつなのか?おい、ミーナ。あの黒い球体に入ってた男を助け出せ。こいつは俺がやる!」 そう言ってグレンは黒い炎を体に纏った。 「黒い…炎だと?」 「そうだ。これはお前らを狩る為の炎だ。」 そう言ってグレンは拳に炎を纏い、PDOの顔面に拳を入れた。 拳が顔に衝突すると小さな魔法陣が魔法陣が発動し、炎の威力が上がるとPDOは勢い良く燃えながら吹っ飛んだ。 「アアアア!!!あぢい!あぢいよぉ!!」 暑さと痛さでのたうちまわるPDO。そんな事は御構い無しにグレンは魔法を唱えた。 「地獄に燃える黒炎、燃やし尽くせ!」 そう唱えるとPDOの体に燃えている黒炎が更に炎圧を増し、勢い良く燃えた。 「グァァァァアアア!!!…これが、悪魔殺しの炎か…なるほど、この炎のせいで他の悪魔どもはやられるのか。」 するとPDOは魔法で体に燃えてる黒炎を体内に取り込んだ。 「なんだ…俺の炎を取り込みやがった!」 「はぁ、はぁ、…俺を誰だと思ってる。改造悪魔のPDO、ベガ様だ!今の炎を取り込んだことで俺の体は炎に耐性ができた。お前の炎はもはや何の役にも…」 シュシュンッーーーッ 光の速さでベガを切り刻み、切り刻んだあとグレンは回し蹴りでベガを吹っ飛ばした。 「がはぁっ!馬鹿な!今のは炎じゃ…」 「今のは光属性の最上級魔法だ。そしてこれが雷の最上級だ!」 するとグレンの指先から一筋の雷がベガの体を貫通させた。 「そんな…馬鹿な…人間が複数の属性を…」 そしてそのまま、ベガの息が絶えた。 「意外とあっけなかったな…PDO。注意する必要は無かったみたいだな、リフェル。」 グレンはリフェルと呼ぶと、体の中にいる悪魔がそれに返事した。 (いや、どうだかね。まだ油断は出来ねえぞ。) その声に気付いたミーナがリフェルに声をかけた。 「え?今の声はもしかしてこの前の…」 (よぉ、久しぶりだな。) グレンはリフェルとミーナが会話をしている事に驚いたのか自分の胸に向かって言った。 「おい、お前まさかあいつと対話したのか?」 (ああ?別にいーだろが。どっちにしろこいつとは一緒に旅する仲間じゃねーか?) 「どの口が言ってやがる。人間を玩具とか言ってる奴がそんな事思うわけないだろ。」 (あっ、バレたか。あはははは!!) まるで独り言の様に見えるが明らかにグレンとは違う存在と喋っているとミーナは分かっている。 しかし、この光景を初めて見る者は不思議でしかなかった。 さっきまで気絶していたカイルは場の状況を理解しようとしていた。 「これは…あの悪魔がやられている?…ん?…あの子の目の前にいるのはもしかして噂の…だが、何を独りで言ってるんだ?」 グレンの中にいる悪魔に気づいていないカイルは不思議そうに見るしかなかった。 カイルが目を覚ました事に気付いたミーナはカイルに声をかけた。 「あ、カイル君目を覚ましたみたいだね。」 「あいつが、騎士団の団長。イフリークの守護神か。」 グレンはカイルを見た瞬間、そいつが団長だという事を直感だけで判断した。 「そういう君は12騎士長が言ってた紅の悪魔祓いか。見る限りかなり出来そうだね。」 そう言ってカイルは両手に持っている剣を握りしめた。 「前からちょっと君の力を試したかったんだぁ…いいよね?」 「えぇ!?急に戦うの!それは流石にちょっとやめたほうが…」 カイルは戦う気満々の目でグレンを見つめ、それを止めようとするミーナ。 しかし、グレンはそれに対して。 「それは、俺に対して喧嘩をふっかけてると受け取っていいのか?」 「どう捉えても構わないです。ただ、悪魔祓いと呼ばれる君の実力を知りたいだけですよ。」 「…いいだろう。お前のその自信は魔力で大体分かる。受けて立とー」 承諾した瞬間、2人の剣が衝突し金属音が辺りに響き渡った。 その金属音と同時に2人の魔力がぶつかる事で爆風が発生した。ドグマに言われた通り朝の4時半に起きたグレンは、龍技の真髄の修行をする為にドグマの後ろに付いて歩いていた。早朝に起こされたにも関わらずグレンは眠そうな素振り1つ見せなかった。「初日で眠くはないのか?」「ああ。普段からあまり睡眠を取らない方だ。昨日はゆっくり出来た。」グレンは旅をしてる時もそうであるが、いつ自分の身に危険が起きても対処出来る様に熟睡は基本的にしない。その為、グレンにとっては明朝4時半と早い時間に起こされても睡眠時間的には十分であった。「…そうか。この程度なら生意気な口も普通に叩けるのか。よかろう、遠慮はいらんという事だな。」ドグマは余裕そうなグレンに対し、そう脅しをかける。「(そういえば、昔アガレフに修行を付けてもらう時も同じ様な事を言われたな。)」……思い出すだけでゾッとし、血の気が引いていくのが分かる。あの時は毎日失神するまでボコボコにされていたなぁ。アガレフの修行は本当にキツかった。「よし、着いたぞ。」真っ暗だった為、到着するまでどこを歩いているのか分からなかったが数十分後、ドグマが連れてきた場所は竜の遺跡にある川の上流の方だった。「川で修行するのか?」「そうだな。修行と言えば修行かな。足の裾を捲(まく)れ。今から川で魚を捕まえる。」そしてドグマはズボンの裾を膝上まで捲り上げると片足ずつ川に入っていく。そして川の真ん中辺りまで行くと水面の上で手掴みする様な構えをした。…バシャッ!素早く水面に手を突っ込み一瞬で掬(すく)い上げる。手のひらからはみ出そうな大きさの魚がドグマの手に捉えられ、捉えた魚を竹と藁で編んだ肩掛けの魚籠に入れる。そして再び魚を捕まえる構えに戻った。「…何してる?お前もやらんか。」「あ、ああ。」グレンもドグマと同じ様にズボンを膝上まで捲り上げて川に入ろうと右足を水につける。「うっ!……」あまりの冷たさに声が出てしまうグレン。朝方の気温の低い山奥の川の水。冷たくない訳が無い。「冷たいだろ?因みに魔法は一切使うなよ。修行にならんからな。」「…いや、魔法使わないと見えねえよ。」只でさえ冷た過ぎる水に慣れない中、真っ暗な時間帯で水中の魚が見えない。しかも道具は一切使わず難易度の高い手掴み漁。目を凝らして水面を見るが当然見える訳が無い。グレンは困惑してる中、隣でドグマは流れ
時は遡る事3日前。この日はカイル、エミル、ミーナが東の大国に到着したばかりの日であった。しかし、ここは北の大国と東の大国よりも更に北東部の奥にある場所。そこは一般の人が立ち入ると必ず道に迷うとされる竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)]と呼ばれる森林があった。その森林の中にある地面は深い裂け目や溝が幾筋も走り、獣道や細い道がそれに沿って複雑に分岐している。道はまるで生き物のように折れ曲がり、進んだはずの者を同じ場所へ戻し、方角の感覚を狂わせる。異常な磁場がコンパスの指針も狂わせる為、人の五感や魔力の流れを読めない人が立ち入れば一瞬で迷路へと変わる場所。この森林の中に1人の男が歩いていた。彼の名前は紅の悪魔祓い(デビルブレイカー)グレン。彼はレミールでミーナ達と合流したのだが、そこの国民に国を守る様に提案される。しかし、それを拒否したグレンは国民に危害を加えられた挙句、抵抗すると悪魔と言われて非難された。そしてグレンは自分のせいでミーナに危害が加わると考え、自ら1人になる道を選んだのだ。では何故彼が今この森林に居るのか?(おい、いい加減にしろ!いつまで歩き続けるつもりだ?もうかれこれ3日は歩いてるぞ?)グレンの中に居る悪魔、リフェル。本名強欲のマモンが話し掛ける。グレンはこの竜爪の錯林(りゅうそうのさくりん)に立ち入ってからかれこれ3日は経っていたのだ。「……この森、まるで生きてるみたいに場所が変化してる。ずっと同じところをグルグル回らされているみたいだ。」木々に囲まれて複雑に分岐した細い道を辿っていくも、いつの間にか元来た道に戻っている。更に元来た道をよく確認すると木々の形や生え方、地面の裂け目の形が少し違っていた。(何回この道来るんだよ!もう100回くらいこの光景見てるぞ!)「……いや、違う。よく見てみろ。この地面と木の並び方。少し違って見えないか?」(は?そんなもん覚えてる訳ないだろ!)「最初来た時はこの地面の裂け目は3本だった。だが今は2本。木も1本1本捻れてたのが真っ直ぐになってる。」(…長い事同じ光景を見て疲れてんのか?…いや、待てよ…グレン、何が言いたい?)何かに気付いたリフェルはグレンの考えを聞く事にした。「多分だが俺達が前に進めば進む程、木や道の形が変化して最初来た時と同じ光景を見せられる。けど、地面
悪魔に襲撃されたクレーアタウン。 アスモディウス達との戦闘により、平和だった町の殆どの建物は半壊している。 今すぐ普通の生活に戻れそうには無かった。 ゴウシが東の大国ノームに救助を要請したお陰で、大型のバスの様な魔力式四輪駆動車が到着。 その中から現れたのはノームの救護隊員達であった。 救護隊員達は生き残ったクレーアタウンの人達を誘導し、自分たちが乗ってきた四輪駆動車の中に乗せていく。 クレーアタウンが復興するまでは東の大国が責任を持って町の人達を守るつもりだった。 アガレフという父親を失ったミーナと、母親のリーナ。 リーナはまだ立ち直れず座りながら俯いていた。 無理もない。17年間、愛して待ち続けた夫が目の前で跡形もなく消えたのだ。 簡単に立ち直れる筈が無い。 そんなリーナの側にミーナはつき、一緒に横に座っていた。 一方カイルはエミルの隣に立ち、目の前にはライク、ニケル、フィナが順に並んで2人と対面していた。 「改めてお久しぶりね、カイル君。」 フィナはカイルを見て挨拶した。 さっきはミーナの父親の件もあり、互いにそれどころでは無く再会の挨拶をする間が無かった。 「まさか、フィナさんが2人と一緒に居たなんて知りませんでした。」 カイルはシルフで別れた筈のフィナが、月の民である元盗賊のライクとニケル。2人と行動を共にしてる事に驚いていた。 するとフィナはエミルの方に視線を移す。 「あなたがライクとニケルが言ってたエミルさんね。私はフィナ・プロミネンス。宜しくね。」 「こちらこそです。エミル・ウォーマリンと言います。……ライクとニケルも、久しぶりね。」 少しよそよそしく2人に言うエミル。 一応、ティラーデザートでエミルはライク達に「裏切り者扱い」されて離れる事になった。 当然エミルも言われて当然だと思っている。 カイルと戦ってくれた時は必死だった事もあって、あまり気にしていなかった。 しかし今になって冷静になると、どんな顔をして2人を見れば良いのかエミルは分からなかった。 そんなエミルの悩みを掻き消すかのように2人は笑いながら。 「エミルも、元気そうで何よりだよ。」 「けっ!何辛気くせー顔してんだよ!」 ニケルは笑顔でそう言うと隣のライクは頭に手を組みな
場面は変わりミーナに会わせて欲しいと訴えるリーナを抱えながら、フィナはライク達の後を追っていた。フィナの"陽"の力は短距離で時間をコントロールして戦うのに向いている為、ライク達に比べると遠くへ移動するのはそれ程速くは無かった。それでもフィナの足は早く、時間のコントロールによってミーナ達とは10kmほど離れていたが5分くらいで近くの地点まで辿り着いていた。「リーナさん!もうすぐですからね!」「ありがとうございます!」フィナが走っていると、少し離れた場所で巨大な光の爆発が起こったのが見えた。「あの爆発は一体…」「…ミーナ。」その時は丁度、アスモディウスに魔力操作"極"の力によって光の爆発を起こした時だった。目の前で起きた光の爆発を見たフィナとリーナ。リーナはフィナの背中に抱えられたままミーナの無事を祈り、そのまま彼女達の戦場へと近づいていく。バタッ。ミーナはうつ伏せのまま地面に倒れ、持っていた刀が右手から離れる。刀の刀身が地面に当たると、当たった部分から刀身がバラバラに崩れていった。魔力操作"極"で刀に膨大な魔力を込めた事で、刀に大きな負担が掛かっていたからだ。ミーナのその姿を見たアスモディウスは先程まで息を切らして焦っていたが、この光景を見るや急にニヤケ始めた。「ミーナァァァ!!!」「ミーナちゃん!」エミルとカイルは走りながら倒れたミーナの方へと走る。しかし、魔力も使い果たし体力の限界だったエミルは早く走れない。「クソ!俺も身体が痛くて動けねぇ!」「まずい!あのままじゃ、あの子が殺されてしまう!」ライクとニケルも同様、雷神と風神の反動とカイルから受けたダメージにより今は動ける状態では無い。辛うじて生きながらえたアスモディウスがミーナの1番近くに居た事で、ミーナは絶対絶命のピンチに陥っていた。「…あれぇ?もしかして、動けない感じ?私、ヤバいと思ったけど。」するとアスモディウスは指をパチンと鳴らした。死者蘇生で蘇った死者達を操る合図だ。ミーナの消滅の光はアスモディウスのみを対象にしていた為、死者達はそのまま残っていた。「勝負では私に勝ってたのに、なんとまあ……残念だったね!小娘がぁ!戦場で気絶する方が悪いんだよ!恨むなら、自分の間抜けさを恨みなさい!」「おい、役立たずの屍(しかばね)共!この小娘をグチャグチャにし
するとベルゼバブが出てきた方とは逆の奥の方から別の足音が聞こえてくる。あの時は魔法が使えなかったから分からなかったけど、ただならぬ魔力を感じる。しかし、悪魔の様な不気味な魔力では無い。温かみのある優しい光の様な魔力。その魔力を持った人…人では無いが、ミーナとベルゼバブが居る方へ歩いてきた。「久しいのう。ミーナ。」その姿は以前ミーナと精神世界で対面した時に見せた、ミーナと全く同じ姿の状態のエル(ミカエル)が暗闇から現れた。「あなたはエル…」「な、何で!?何で君が居るの?大天使・ミカエル!」ベルゼバブはミーナの姿をしたミカエルを見て驚きを隠せなかった。普段無邪気に相手を挑発したりするベルゼバブが焦りを感じている。悪魔にとって天使という存在は、嫌悪を抱くと同時に恐怖の対象でもあった。ベルゼバブに視線を移すミカエル。「そなたはベルゼバブ。妾はこのミーナと共存してるのじゃ。…この姿じゃ、ややこしいな。」そう言うとミーナの姿をしたミカエルは変化していく。そしてミカエルは姿を見せた。白銀の長い髪を風に揺らし、透き通る青い瞳で静かに微笑む天使の翼の女性。白を基調とした和の装いには淡い金の煌めきが散り、腰紐と房飾りが上品に揺れる。大きな白い翼を広げたその姿は、神域の気配そのものだった。「それが本当のエルの姿…本当に天使みたいだ…」ミーナは天使の姿のミカエルに驚いていたが、その神々しい姿に見惚れいた。「天使みたいでは無い。妾は天使なのじゃ。」ニコリと微笑みながらミカエルは言った。柔らかいその表情と立ち姿はその名の通り天使と呼ぶに相応しく、一つ一つの言葉や所作が周囲をまるで温かく包み込むかの様である。その温もりは暗闇の精神世界が天国の様に思える程だ。「大天使がミーナの中に居たなんて…まさかとは思うけど、君の力を彼女に貸し与えてたりしないよね?」「妾の"恩恵"の力か?ええ、そうじゃ。妾の力を与えた事でミーナは力を使えるぞ。」何てこった…と言わんばかりの顔をしながらベルゼバブは手を頭に抱えた。何故ベルゼバブが頭を抱えてるのか分からないミーナ。「え、何か不都合な事でもあるの?」「不都合といえば、不都合かな…天使は僕達悪魔の魔力を凌駕するからね。何も対策しなければ、悪魔は天使によって一瞬で消されてしまう。」ベルゼバブの言う通り、一度
ミーナ達3人が戦っていたその頃。東の大国で元八握剣(やつかのつるぎ)であったギンジはミーナの母であるリーナを連れながら、他にも生き残ってるであろうクレーアタウンの市民を探していた。生き残っていた市民は結構居た為、全員助けに来てくれたギンジの後ろをゾロゾロと歩いて着いて行く。そんな中で思わぬ人物に出会った。その人はギンジにとってあまり会いたく無い人物。「ギンジ!お前、こっちに来てたのか!?」の太く低い声の主である彼の名前はゴウシ。八握剣(やつかのつるぎ)の土刃(どじん)と呼ばれる男である。見た目年齢が30代後半は過ぎてるであろうゴウシは、ベリーショートの茶髪に整えられた茶髭。八握剣のバンジョウやスイゲツと同じ侍の様な服装をしているが、体型はガタイが良いと言うよりも巨漢に近かった。丸太の様に太い腕に、武器は刀では無く斧を背中に担いでいた。「ゴウシ…そういえばスイゲツの奴が言ってたな。」ギンジはゴウシの事を嫌そうな目で見ながら東の大国ノームでスイゲツが言っていた事を思い出した。「はい!先程八握剣の土刃、ゴウシ様から連絡がありまして。最近東の近隣の国が悪魔に襲撃されているとの事です!」スイゲツがあの道場で報告した内容の発信源は確かゴウシであった。市民を助ける為の人手が足りない現状ではとても頼りになる存在であるが、国を出るつもりのギンジにとっては不都合でしか無かった。どうせこいつも八握剣(やつかのつるぎ)に戻れって言うに違いない。「お前が居てくれて良かった!ギンジ、俺もこの町の人達を助けたい!だから協力させてくれ!」しかし、ゴウシから出てきた発言はギンジの予想とは違っていた。「何だ、俺の事を引き留めようとしないのか?」「いや、今はそんな場合ではないだろう?そりゃ、お前には戻ってきて欲しいが、それよりも先に今はやるべき事があるだろ。」ゴウシは八握剣の中でも正義感が人一倍強く、真っ直ぐな性格であった。その正義感に加えて人々の為に今自分に何が出来るのか、常に考えて行動出来る人である。しかし、不可解な事が一つあった。「確かゴウシが居る場所はここよりも数km離れていた場所だ。どうやってここまで来た?」高速移動や転移魔法を使えないゴウシには一瞬でここまで来る移動手段が無かった筈だ。ーーどうやってここまで来た?こいつはこの町には居ないと思